ついに、ケンドーコバヤシが一皮剥けた!

 有吉弘行のケンドーコバヤシ論(死んだ目でダブルピース)
 こちらの記事が非常におもしろく、ネットでこの回の音源を探して聞いてみた(というより、ケンコバのラジオに有吉が出たと書いてあった時点で、読むまえににまず探した)。すると、こちらの記事に載っていないところまでもが、かなり興味深かった。いままでどこか生ぬるいところがあったケンドーコバヤシに、変化が見られたからだ。ケンコバという芸人は実はとんがっているようでとんがり方が予定調和なところがある。眠れる獅子なのである。眠っているのにもかかわらず、その他の多くの芸人よりも力があるという、恐るべき眠れる獅子だ。
 ここではそのラジオと共に、先週のアメトークのプレゼン大会でのケンコバの様子を交えて、ケンコバの今後について語ってみようと思う。
 まずは、ラジオから。上記記事の最後に載っている、「ケンドーコバヤシはザコシショウで代わりが利く」というトークの後、このように続いている。

ケンコバ:そういう意味では有吉弘行という男は、替えが利かない、
有吉  :そうですね〜、今そうかも知れないですね、ホントに。
ケンコバ:(笑)
有吉  :今ただ一人の存在、
ケンコバ:孤高!
有吉  :孤高の(笑)。天才とは言いませんけどね。
ケンコバ:天才とは言わななくとも、孤高ではあると。
有吉  :孤高ではあります(笑)

 ここから最近の太田プロはすごいと、土田や劇団ひとり、有吉、それぞれが孤高だ、と言う話が。そしてそこから

ケンコバ:やっぱり吉本興行の面々を見ると、てめえらたむろってんじゃねえぞと、
有吉  :やっぱそうですね、生ぬるいなっていう感じはね、受けます。
ケンコバ:どこが生ぬるいのよ俺らの(笑)
有吉  :いややっぱりねえ、その〜、楽屋とかでもそうですしね、現場でもね、ニコニコしながらやってますよ、楽しそうに。
ケンコバ:いや、たしかにわれわれ、仕事は楽しいのが一番みたいな感覚ありますよ。
有吉  :やっぱり僕らは、そういう意味ではその、対吉本の隙間を狙っていかなきゃいけない。
ケンコバ:はい。
有吉  :吉本さんの顔色も伺いつつ、いつも現場で、
ケンコバ:やっぱり吉本ってのは顔色伺っていかなあかんとこなの?
有吉  :そうですね、いろいろやっぱり恐ろしい話も聞きますしね。
ケンコバ:聞く?
有吉  :吉本に歯向かったから、恐ろしいことになったと
ケンコバ:恐ろしい話聞く?
有吉  :聞きますね、やっぱそこそこ力の強い先輩がいらっしゃいますから
ケンコバ:(笑)いらっしゃるね、「妙に」力の強い先輩が、やっぱ、数組おられますから
有吉  :いらっしゃいますからね、その辺への気の配り方がハンパじゃないですね、僕らからしてみれば。ホントにもう、毎回毎回が命がけというか、うん、そういう感じがしてますね。一回も、ケンコバさんみたいにレクリエーション気分で仕事したこと無いですね。
ケンコバ:(笑)確かに俺はレクリエーション気分で仕事してるかもしれない、俺は確かにそういう節があるかもしれない、ここから這い上がってやろうみたいなことは一度もないかもしれない。

 有吉の吉本批判。最初は話を聞くだけだったケンコバだが、後半には「妙に力の強い先輩が、やっぱ、数組おられますから」と、少し有吉の批判に乗っかっている。
 さらに、自らがレクリエーション的に仕事している節があることを反省している。

ケンコバ:いきなりの吉本批判をくらわせるとは。
有吉  :そうですね、吉本・・・(笑)。まあそうですね、吉本批判、と取ってもらっても、まあ問題はないですよ
ケンコバ:まず生ぬるい? だから。
有吉  :まあ生ぬるいででしょうね。
ケンコバ:レクリエーション気分で仕事しやがってと、戦場ということが分かってないばお前らはと、
有吉  :まあ、分かってないでしょうね。

 ケンコバが批判に乗ってくる。「吉本批判ととってもいい」に対して、自発的に「生ぬるい?」というワードを使って質問しているのがデカイ。
ここから、「現場は戦場だ」と言ったさんまの後輩でありながら、なぜこの有様だという話を繰り広げる。

ケンコバ:いや確かに、武器も持たずに普通に始まって普通に終わることありますから。
有吉  :ええ、ええ、ええ、あとは、
ケンコバ:今日は武器持たないのが正解なのかなみたいな気分でいっちゃうことありますから。
有吉  :確かにそうですよね、ケンコバさんでも、ほんとに空気のときよくありますからね。
ケンコバ:あります。
有吉  :そういう、
ケンコバ:大物であればあるほど空気になった方が良いのかなっていう、

 そこから大物が来たときには「空気でいようとしている」ことが多い、とケンコバが告白。これは、長いものに巻かれろ的な精神がカッコ悪いという認識があったが、それをやってしまっていたという告白なのだろう。
 さらに、ここでは有吉が喋るのをさえぎってケンコバが喋るのが目立った。「あとは、」と続きを喋ろうとしているのにに対してかぶせる。「そういう、」に対しても。かぶせたのは自らの過去の恥ずべき行為の告白。これは反省だとか焦りみたいなのがそうされているのだろう。非常に印象的だ。

 そこからさらに「吉本は打ち上げが楽しそう」という話から、「でも有吉にとっては打ち上げが苦痛」という話へ。

ケンコバ:苦痛? なんで普通に皆で打ち上げいったらいいやん
有吉  :吉本特有の、なんていうのか、打ち上げなのにコントやりたがる感じとか
ケンコバ:(笑)それはそうですよ、眼鏡掛けてる人の眼鏡が、無事に打ち上げ終えることはないですから、
有吉  :そうでしょ?
ケンコバ:ご飯盛られたりしてますから
有吉  :そうですよね、あのへんがまあ血気盛んな二十台の若手だったりしたら良いんですが、まあ、三十半ば、四十くらいの大人たちが、眼鏡にご飯盛ってキャッキャ言ってる姿は、僕らにとっては苦痛でしかないと、
ケンコバ:おもしろくもくそもねえと!(笑)
有吉  :(笑)
ケンコバ:あんまりやないか!(笑)そんな目で見てたんか!

 またケンコバは自発的に「おもしろくもくそもねえ」という、刺激の強い言葉を選んで使う。間接的だが、吉本へ向けての言葉なのに。
 ここから、自分も竜平会に属してるけどね、という話。打ち上げってはごまするみたいな感じあるでしょ? って話。などなど。この辺もおもしろいんだけど割愛。
 吉本以外でも打ち上げ来てくれる芸人はいる、でも有吉は来てくれない、という話から、有吉の「そういう悪しき習慣と闘っていきたい」という話。

有吉  :飲みに来るから引き上げてやろうなんていう話が耳に入りますと、ちょっと不満に覚えますし
ケンコバ:あぁ〜。中にはそういうこともあるのかな?
有吉  :ひょっとしたらあるのかもしれない
ケンコバ:飲みに来たから引き上げてやろうみたいな

 この「中にはあるのかな?」というセリフは、吉本所属の芸人が吉本のこういう部分に触れるときにいえる、ギリギリの肯定だろう。普通なら「いやー、それはないんちゃう?」とかだ。
 ここから、ケンコバはそういう吉本の中で、唯一の希望の光だ、という話。

有吉  :あの、コバヤシさんに関しては、楽屋であまりはしゃがない、というところが
ケンコバ:だろ?
有吉  :ええ。
ケンコバ:(笑)
有吉  :そこにはすごく、
ケンコバ:シンパシーを感じてくれてる?
有吉  :シンパシーを感じてますね。非常に。
ケンコバ:確かに楽屋ではね、普通に座ってるだけですもん。タバコ何本吸うねんってくらい吸ってるだけですもん。
有吉  :そこにはやっぱり、吉本とのホットラインがあるとしたら、コバヤシさんくらいかなと
ケンコバ:なにがおもしろいんだと
有吉  :はい
ケンコバ:本番前のミニコントが
有吉  :はい、全くその通りです
ケンコバ:いやでも中には、それが本番にいかされるなんてのも。俺なんかミニコント参加して無いのに、横で見てたからなんとなくノリ分かってるから入っていけるみたいなね、そういう利点もあるわけだから。
有吉  :なるほどね。あぁ〜、……なんかなぁ、おもしろいですか?
ケンコバ:(笑)
有吉  :おもしろくはないですよね、ごめんなさい、これは、ちょっと。
ケンコバ:おもしろくはない?
有吉  :おもしろくはないでしょ?
ケンコバ:いやいや、そんなことないよ
有吉  :おもしろいですか?
ケンコバ:まあ、あんまおもしろくは、ないかな。
二人  :(笑)

 そしてこれである。最終的に吉本のミニコントをおもしろくないと言い切った。楽屋ではしゃがないと言われたときに、強く「だろ?」というあたり、やはり楽屋ではしゃぐ吉本芸人に悪い印象を持っていたということだろう。それを隠していただけで。
 「吉本とのホットラインはケンコバだけだ」といわれたのに対して、少し自分で流れを変えて「なにがおもしろいんだと」と言い出してるのがすごい。
 ケンコバの隠れていた牙が少しずつ姿を見せ始めている。
 このラジオでは有吉が引っ張ってケンコバが隠していた牙を見せ始めていたが、アメトークでは自らが牙をむき出した。
 その牙というのは単純に企画内容なのだが、こちらを見ていただくのが手っ取り早い。「刑事芸人」としたその内容がなかなかとんがっている。

・刑事ドラマで培ったスキルで犯罪芸人を捜査のうえ、逮捕
<例>
・下心ならまだしも、自分が駆け上がっていく為に
 ファンにいい顔する芸人
・サブカルチャー雑誌等のインタビューで真面目に答えている芸人
 など

 「刑事ドラマに出たことがある芸人を集める」というだけじゃ、企画としてあまりに弱いことを考えると、ケンコバの発想の中心は、この「例」の部分のとんがった内容だろう。「犯罪芸人を逮捕」をやりたいというよりも、この「犯罪の内容」に重きを置いているというのが分かる。やりすぎコージーでやっている、「やりすぎFBI」と似ている感じもするがそれとは「犯罪の内容」が全然違う。サブカル雑誌等のインタビューで真面目に答えている芸人、とか、かなりエグいとこ突いてきている。
 これは、今までのケンコバのどこか予定調和的なとんがり方とは一線を画している。有吉のラジオとアメトークの収録、どちらが先だったかは分からないが、なにかのタイミングで今までのぬるいやり方じゃダメだと思ったのは確かだ。ちなみに、今まで投票なんてしたことは無かったが、ケンコバの牙を評価して今回はこれにだけ投票してみた。
 実はケンコバは、自らのラジオの第一回では、こんなことを言っていた。

今最も皆さんの想定の範囲内で暴れられる男です。

 薄々、自らが眠っているということに気が付いていたのだろう。


 その眠れる獅子が、今、目覚めたのかもしれない。