バナナマン日村がマジ切れ、「俺は傷ついている」という悲痛な叫び

『めちゃイケ』に限らず、ある世代のお笑い芸人は「権威を傘にしたいじめ」を肯定している - 昨日の風はどんなのだっけ?
 お笑いといじめ。この二つは、コアなお笑いファンほど切り離して考えようとしがちだが、実際のところ、切っても切り離せない関係にあることが事実だ。上記の記事では、そのことについて具体的に述べている。それと同時に、一つ、それに関連した非常におもしろいラジオの回があったのを思い出した。良いきっかけを得たので、それについて紹介し、解説を加えていこうと思う。
 それというのは、2009年03月16日放送の「バナナマンのバナナムーン」での出来事である。実は、過去に「バナナマンのバナナムーンが最高におもしろかった。」という記事で紹介しているものだ。その記事にも概要は書いてあるが、ここでは引用などを駆使して一から説明して行こうと思う。また、この放送の最後では、「誰が悪いのか」という投票が行われているため、「自分なら誰に投票するだろう」ということを考えながら見ていくと良いかもしれない。
 今回、ほぼ引用に終始して、自分ならではの意見などはちょっとしか書いていないけれど、とてもおもしろい回だし、たまにはこんなのも良いかなと思います。
 バナナムーンでは、バナナマン日村がプライベートでおこなっただらしない行動などを紹介し、「最低な人間性を治そう」というような企画をやっていた。その企画内では、最終的にその「だらしない行動」の制裁としてビンタをするというオチが付いていた。そしてこの2009年03月16日放送回、また新たな日村の「だらしない行動」が明らかになった、という流れがあった。
 その「だらしない行動」の内容はこうだ。日村一人で出演したライブを永井と及川という放送作家が見にいっていた。その二人の作家を日村は「終わったあと飲みに行こう。打ち上げは早めに抜けてくるから」と誘っていた。そしてその二人の作家はファミレスで待機していた。しかし、日村が来たのは待機から三時間後。打ち上げが抜けれないどころか楽しく、ところどころで「待ってるよなあ」と分かっていたが、酔いもあって、放置してしまった。しかも、日村はファミレスに来てすぐに「眠くなったから家に帰る」と言った。作家二人はコンビニで飯を買い、日村と一緒に日村の家へ行った。しかし、酔っていた日村は帰ってすぐ眠ってしまった。
 それについて設楽に責められているとき、日村が静かに怒り始めた。
(※長文がだるい人は「オークラ」という人物が喋り始めるところあたりから読めばいいかもしれません)

日村:チクってんじゃねえよ
設楽:おいおいおい、出た出たほいほい、日村さん! 何でそういうこと言うの? これでもうこのままじゃ終われなくなっちゃったよ
日村:冗談じゃねえよ
設楽:日村さんこれは、それはいけないです
日村:俺がなにしたんだよ
設楽:なにしたってやったでしょうこういうこと、日村さん
日村:はい
設楽:それがダメだって言ってるの、これね、これもうダメですよ、ビンタです。
日村:ビンタなんかもらうかよ、やだよ
設楽:あ、目つぶりになりました

 いつものパターンとは違って、怒り、ビンタを嫌がる日村。ここで、設楽が作家二人を呼び出す。だれが悪いかを三人で話し合えと。その中で一人だれがビンタをされるかを決めろ、という流れ。

日村:俺は! 確かに君たちに待っててくれって言いました。ね。打ち上げ終わらせてすぐ行くからその後飯でもいこうか飲みいこうかって言ったかもしれない、それに関して俺は裏切ったかもしんない。でも、なにチクってくれてんだよってことなのよ俺の怒りは。
設楽:最低だ(笑) 最低の先輩だぞ(笑)
日村:なんで、それをわざわざチクる必要あるのってことなの。笑ってんじゃねえ。なにをチクる必要があるの。ソレやりだしたら俺だってなんこでもチクろうと思ったらなんかやれるぜ? 俺はやらねえからそういうことを。別にそこで起こったことをそこで俺に言ってこいよ。何でこのラジオを使って設楽統を通してやる感じが気に入らない。どっちがチクった?
設楽:最低だ
日村:どっちがそれをやってんだ? 一週間もあったんだから俺に言えるチャンスはいくらでもあったし、怒りがあったら直で言ってこいよ。なにこのラジオ利用してくれてんだよ。
設楽:日村さんどっちだと思う?
日村:え?俺? 俺は実は及川だと思ってるけど、こういう陰険な策をとるのは実は永井なんだよ。こいつはチョコチョコ実はやってくれてんだよ。今までずっとそうだった。そんな気がする。お前だろうが。
設楽:永井だと思う?
日村:お前がなんかちょっと変な感じで言ったのを膨らましたんだよお前ら。話を。
設楽:でもさっきの僕が言った事実は、あれはそのまんまなんだよね。
日村:あ、その事実を捻じ曲げてはいない。そこに対して及川そこまで俺は気づいてなかったと思う。お前か?
永井:はい
日村:お前だよな、お前がなんか消し立てたよな。
永井:いや、あの、チクったつもりは全然ないです
日村:、チクったつもり無かったらこれどういう状態なんだよ。大事件じゃねえか。
永井:普通にオークラさんと話してる流れで、あの、日村さんのライブ言った、どうだった?、いやおもしろかったです、終わったあと飯とかいったの?ってなって、行く予定だったんですけど、こういう感じで日村さんの家で、コンビニ弁当食べました、って言う話を、して、
日村:オークラに言ったんだな。チーフ作家。それでこういう風になってるんだ。これがチクったとかじゃないんだな? お前チクってないとおもってんだな? お前ちょっと自分がやってしまったこときづいてもないんだな。最悪だなこいつ、決定だな。お前だなビンタ。設楽さん決まりました。

 ここで、まだ決まるのはおかしいということで、一旦曲へ。
 口調は終始厳しく、おいおいこれはすげえことになったぞと思いながら聞いていた。
 曲終わり、日村が「永井がビンタです」と言うが、それはどうなのだろうと言う設楽のやり取りがあった後。設楽が作家二人を反論するように誘導する。

設楽:分かった日村さん。永井の意見も聞こうよ。
永井:チクったって言う言葉にすると、なんか、悪いことしてるみたいなんですけど、純粋にオークラさんに、まあ、相談じゃないですけど、
日村:相談ってなんだ
永井:相談じゃない
設楽:相談なんじゃない?日村さんの傍若無人に耐えられない
日村:オークラを出す、オークラが悪くなっちゃうじゃん。なんかずりいんだよお前、人の名前だしたり。お前な。ちょっと待てよ。こっちは名前晒して放送やってんだよ! バナナマン日村ですってやってんだよ。お前らはいいよ、及川だ永井だって言ってもさ。街中歩いてて「おいお前か永井」ってなんねえだろうがよ。こっちはよ、この放送によってよ! 何人の人をよ! 裏切った形になると思ってんだよ。お前。人気商売だぞこっちは。お前らやってることの問題の度量が違うんだよ。お前らはたかがここの笑い一個の問題かもしれないけどな、ビンタ一つの笑いじゃおさまんねえんだよこっちは。
設楽:日村さん、人気商売だと今のこの放送がやばいです、この感じが

 ラジオらしからぬ本音ぶちまけ。険悪になり過ぎないようにところどころ茶化したり、永井の側にも意見をちゃんと聞き入れたりと、設楽のバランス感覚が光る。
 さらにここからどんどん日村のテンションは上がっていく。

設楽:じゃあなに、永井の言い分としてはどうなの
永井:あの、ビンタ僕がもらうのはおかしいと言うか
設楽:じゃあなに? 及川とかがもらった方がいいってこと?
永井:いや
設楽:たぶんね、さっきの話聞いてるとね、日村さんはお前のことなんてチリとも思ってないんだよ。及川の名前しか出してないし、お前がそとで待ってたお前の時間なんて、もう、なんとも思ってないんだよ。
日村:それは違うからな、お前それで信じてくんの違うぞ
永井:ちょっと外できいててたときも、及川さん
日村:お前ずりいんだよ、設楽さんのそれに乗ってくるのずりいんだよ、お前のでこいよ
 〜中略〜 
日村:じゃ、どういうこと、じゃなに? 俺はやったことは悪かったって認めてるからそれでビンタはいいよって言ってるじゃん。俺が言ってるのはお前チクったじゃんってことへの苛立ちなんだよ
永井:申し訳ないんですけど、あのー、その、日村さんがした事実をお話したってだけなので、
設楽:「こういうのがあったんですよー今度ラジオでしゃべってください」的なノリではなく
永井:はい
設楽:普通の出来事だったの
永井:どうだったのって言われたのでこうでしたって事を

 この辺からは「三時間しか待たせてないからね」「長いですよ」「じゃあ、三時間も待ってくれなかったんだってとるよ」というような会話。若干日村の主張の核から離れたやり取りなのでこの解説だけで。
 及川が日村の行動の詳細を暴露し、じゃあビンタはだれが受けるべき?と聞かれる。

及川:ビンタは、僕ではないと思ってます
設楽:じゃ永井か日村さんかどっちかだと
及川:じゃ永井は
永井:僕は及川さんだとは思ってない
設楽:じゃあ自分がもらうの?
永井:僕が一番ないと思ってますし、
設楽:じゃ日村さんがもらうの?
及川:ま、日村さんがもらうとおもって…
設楽:なるほどね。日村さんは永井だと
日村:100%永井です
設楽:1対1なわけです。及川はどっちでも良いと思ってると、自分以外。及川の票を獲得することですよね。

 設楽の誘導がうまい。可能性を一つずつ聞いていって言いづらいであろう「日村がビンタ」と言う答えを引きずり出した。
 ここから日村の及川への演説。人間はトータルで見ていこう、俺はお前のために旅行や飯、いろいろしてきた、という主張。全くの初対面の人間にやってしまったなら自分は最低だという主張。そこから日村のテンションが一度目のピークを迎える。

日村:俺ね、全くの初対面の人とか、そんなに面識のない方にこれをやったらほんとに最低だ思うけど、俺は及川も永井も大好きだし、だから俺、ごめん。お前たちに甘えてしまった部分があったと思うんだ。だから今回、やってしまったことに関しては悪いけども、俺は二人を信じてぇ! …やったつもりであるし、これに関して後々一週間も二週間もたってから、こんなチクチクってやられるとは思わなかったし。逆にねぇ! この一週間俺はぁ! そういう風に思われたんだと思うと! 恥ずかしいよ!(怒鳴るように)
設楽:日村さんちょっと声下げてもらっていいですか
日村:逆に恥ずかしいよ(小声)

 設楽の茶々いれで日村が我に返ったことで笑いになったが、この主張の部分の日村の声色には物凄いものがあった。怒りどんどん込み上げてくるような声色。怖い。
 ここから日村が「なによりなんですけど」と前置きして、二人は同盟組んで二対一みたいになってるけど、ここがずるい感じがすると。この二人は全然仲良くないからね、と。さらにそこからすごい主張を。

日村:潰せばいいじゃん永井のことを。何でおれを潰すことを考えてんだよ、自分のことをまもることを考えてるのかもしれないけど、なんで永井を潰す方に考えらんねえんだよ
設楽:日村さん最後に言おうと思ったけど、やなやつだなぁ(笑)
日村:なにがやなやつなんだよ! なんでいま永井を潰す方向の考え方が出来ないんだよ、がんばれもっと!

 ここから永井はチクった訳じゃないと再び主張。残念だったのは日村のピンネタがおもしろくて、その話ばっかりしてた、日村さんはやっぱりすごいと。その話を本人にしたかったし、話が出来なかったのが残念で仕方がなかったと。
 二人主張そろったし、これで及川が決めるでいいのかな? と言うところから日村の返答。

日村:よくないですね。永井の言うことのこの上っ面な感じが大っ嫌い俺! 何一回俺をおもしろかったってことにして俺をいい気にさせておいてからの感じとか大っ嫌い。俺ほんっとに嫌いこいつ! こんなのがいるんだよ。どう思う? あなたが言われてる可能性も十分ありますよ! あなたのことを恐れて、彼らは何も言いませんけど、彼は! そういう男ですよ! これで自分は悪くないと言いながら、オークラにチクってるんですよ。そういうことしますよ彼は
設楽:永井はそんなやつわるいじゃないですよ
日村:あなたは何もされてないからですけど! この人影で! 影で! とんでもないことしますよ!

 すごい。この圧倒的な「本音感」が抜群におもしろい。ロンハーの格付けとかの本音感とかよりも全然すごい。普段いじられキャラの日村が言うというのもあって物凄いことになっている。でも、まだいろいろとおもしろい展開がある。
 ここから永井の人間性がどうかという話はおいておこう、ということになり、設楽は日村がビンタもらったほうがおもしろいと思う自分のエゴがあるけど、でも冷静に判断したいと言う。
 日村は自分も確かに悪いことをしたから、それでビンタをもらって、さらにチクったということでもう一人にビンタ、という考え方もあると。でもそれだと設楽がビンタしまくることとなり、イメージが悪い、王様かと思われる、だからビンタは一発にしようという意見。これは本気で怒りつつ、「ビンタは一発」の方がラジオ的におもしろいということを考えて言っているのであろう。自分がやったことも悪いが、チクった方がもっと悪いため、チクったやつがビンタだ、と主張。と、そこから新しい展開。

設楽:ただこれね、チクったっていうのだったら、おれむしろ永井じゃ無い気がする。長居は普通にこんなことがあったって話をしただけで、これをチクった犯人は誰かって考えたら、自ずと、そのチクった部分での一番の黒幕がみえてくるんです
日村:僕は正直、それもやっぱりありますよ
設楽:誰ですか?
日村:オークラですよ
設楽:ですよね。一番最大限のステージに持ってきたのはオークラです。オークラは完全なる面白くなるんじゃないかって言ういろんな計算の元、本番ギリギリであの紙を僕に渡してきましたから。手書きのね、こうこうこうって。いわゆる、チクった犯人を突き止めるなら、永井を責めてても、永井は全然いわゆるその、黒幕、ではない。
日村:まあまあ、確かにそうですよね、オークラですよね。実際こういう風にけしかけてるのはね。
設楽:そうです。だとしたら、誰がもらうべきですか?
日村:オークラなんじゃないでしょうか!

 日村の標的が変更。ここから、徐々に話がバラエティの本質的な話へと移っていく。現場を作っている人間によるバラエティ論、エンターテイメント論へと発展する。

日村:何をしたいんだこのラジオで彼は
オークラ:おかしくないですか
日村:なにがおかしいんだ
オークラ:僕はそもそも
日村:なにがしたいんだ
オークラ:永井に、「オークラさん聞いてくださいよ〜こないだこんなことあって」って、俺はそんなこと聞くつもりなくて、永井最近なんかおもしろいことあった? って聞いたら、永井がもうニヤニヤして、ちょっとオークラさん聞いてくださいよ
設楽:ニヤニヤしながら言ったの?
オークラ:相当ニヤニヤして
設楽:それ例えばオークラがなんかあったか聞かなかったら言うつもりなかったの?
永井:もちろんはい
設楽:あー
オークラ:いいや、こいつはそんな男じゃないですよ、俺も、永井が悪いと
設楽:え? 永井なの?
オークラ:こいつは、ほんとに
設楽:でもさ、この出来事エピソードをさ、ひいてね、冷静に見たときの、一番の悪い人をビンタすべきだと俺は思うの。日村さんの今言ってた今言ってたち食った犯人でオークラの名前出てきちゃったけど、もしかしたらオークラなのかもしれない。
オークラ:俺はチクってはいません
設楽:オークラチクってないわけ?
オークラ:俺は日村さんの、そういう、だらしない行動があるわけじゃないですか
日村:はい
オークラ:それを、エンターテイメントにしたと思ってるんです。だからチクったとは言わないと思う
日村:なんですかエンターテイメントって。こうやって? こうやってラジオで!? 俺がこうやってあくせく「俺じゃないですー」ていうふうにやって!? 俺最低の人に今俺はなってますからねこの放送で言っときますと! これでビンタされて? これでエンターテイメントですか!? 何がこれでエンターテイメントですか!
設楽:じゃあオークラがやっぱ悪いと
日村:そうでしょう
オークラ:俺は悪くない
日村:何がエンターテイメントなんだよ
オークラ:このまま考えて日村さんが三時間、待たせてたって言ったら、日村さんが影でこういう人でしたたって影で思われてたって言うのを、
日村:なんで影で思うんだよ、何で俺に直で言ってこないんだ、設楽にカンペを出すんだ、なんで、これのどこがエンターテイメントなんですか! これが。なんですかエンターテイメントって! 冗談じゃないよ
オークラ:カンペだした方がおもしろくなると思ったんで
日村:もうねじまがってるよ、オークラの言うことは、何でもかんでもおもしろいとかさ言うとこが捻じ曲がってるんだよ彼は。「おもしろさ」って言うものを。
設楽:確かにオークラのおもしろいって思うところで、いろいろなね、人間の心に傷を作るときもあるっていうのは僕も知ってますよ。この、やりすぎなんじゃないかと。笑いを求めすぎてるんじゃないかって部分がはあることはある思います。オークラはそういう仕事でずっとやってるからね。ただ、これが必ずしも全部悪いかって言ったら、いや、そうではなくて、よくなってることの方が多いって事実も俺は知ってるわけです。
日村:それは俺も分かってますよ。

「バラエティといじめ」に非常に近い意見。おもしろい。現場の人間の生の声というのは大きい。この話はまだ続く。傷つけることもあるけど、でもそれが良い方向に働くことの方が多いと。

設楽:だから、今オークラと日村さんのどっちにビンタすれば納まるのかってことになってるじゃないですか。俺は判断しかねるわけですよ。永井から移行して
日村:はい
設楽:俺は判断しかねるわけですよ。もう、トータル的には日村さんにビンタすれば、この場は一件落着だと思うんですよ。ホントは。なのに日村さんがこんなに怒るのは、何でこんなにかたくなにビンタを拒否するんだって思うと、今までの日村さんとはちょっと違うんじゃないかってね。だから時間を割いて今日やってるんですよ。
日村:すいません。
設楽:もしかしたらオークラなのかなって傾いてます。熱弁してるから。圧倒されてます僕。
日村:だってね、そうじゃないですか、僕はね、あのー、おもしろさっていろいろあると思うんですよ。そりゃオークラはね。俺信頼してるし、付き合い長いから
設楽:十数年の付き合いですからね。もう一人のバナナマンって言うくらいでうから。
日村:そうおもってましたよ俺だってもう一人のバナナマンって
設楽:あれ、もう思ってないんですか
日村:思いたくもないよ! こんなことになって、敵以外なんでもないじゃんか! こうやって毎回毎回俺は変なことさらされてんだよ。このラジオで! どう思われてんだ! どう思われてんだ、俺が毎回「バナナマンの設楽さん、ブタゴリラさん」とか、あの(メールなどに)書かれてる事実を、お前らはあざけ笑ってるけど、傷ついてないとでも思ってんのかこっちがぁ!

 もう、ものすごい告白。「あざけ笑ってるけど、傷ついてないとでも思ってんのか」。これ。すごい。こんなことを電波で怒鳴りつけた人なんて今までいただろうか? いじられ芸人の叫び。これはやはり無視など決して出来ない。考えるべきところがたくさんある。

設楽:あー、そういうトータルのところでも日村さんはいろいろ背負ったものがあるんだと
日村:そうですよ
設楽:それでいまちょっと爆発しちゃってんのかな
日村:おかしいじゃねえかよ! 何で俺ばっかりこんなに言われる、みんなちょっとずつ間違ったことあるよ!
設楽:なるほどね
日村:それをいちいち取りざたされてさ、最低人間と映されてさ、…ビンタだってよそんで! みんなはそれでいいだろうけどさ、俺は一人だけ決着付かないで終わってるんだよ
設楽:ビンタされて、決着が付かない
日村:そうだよ

 こういう心の叫びを聞ける機会ってなかなかなよなあ。バラエティと人間の心というとても難しい問題。
 ここで、番組内に終わらせないといけないという話を挟む。一番はリスナーのためを考えなきゃいけないと。もし生でアンケートとったら日村になるであろうと、一番汚く映ってるから。ただ、それは本音でしゃべっているからだという話。でもそんなに言うのはビンタされたくないからだけじゃないの?と、設楽。
 ビンタをされたくない理由を日村が答える。ここからさらに深い話へ。

日村:俺が言ってんのは、ビンタをされるじゃん。みんな「気持ちよかったー」「あー結局日村が悪だったー」みんなも「ははーおもしろかったー」エンターテイメントだからこれがね。
設楽:通常のバラエティならそうですよ。なんだかんだ言っても一番吠えてる日村さんが最後にやられるっつーのがルールですよ、今日はこんなこと言っちゃいますけど「ルール」ですよ。そして、日村さんは、ある程度でなんとなく、自分にするんです。これがルールです。だけど、今日は違う風でもいいです僕は。
日村:だから、俺はそれでもいいんだけど今までだったらそれでいいんだけど、待ってくれと、みんなの中で決着付いたかもしれないけど、俺は! 一度たりとも決着付いてないよ! 正直言うと。今までずっとビンタ、何で俺がビンタを食らって終わりなんだよ。

 バラエティのルールというところまで踏み込んだ話。おもしろい。
 ここから、まず及川はビンタではない。さらに、やはり永井ではなくオークラだと日村は主張。

日村:あのね、エンターテイメントだとかおもしろくしたいんですとか言ってるでしょ? 〜略〜 「おもしろさ」ってことをなんか言ってくるけども、それによって傷ついてる俺もいるんだってことを一回分かってもらいたい。
設楽:なるほどね。たぶんオークラは、ここでは言わないですけど、「そんなこたぁ知ったこっちゃねえ、あんたおいしくなってんじゃねえか」って思ってます。これは僕がオークラが思ってる…
日村:ぜったいそうだと思いますけど
設楽:確かにそれ一理あるんですよ
日村:わかります、俺だってわかりますよ。オークラが本気で俺のことを憎くて、こんなエンターテイメントを仕掛けてるとは思えないからね。「おもしろくなればいいでしょ」でしょ?

「おいしくなること」と「傷ついている人間」の天秤。どちらが正しいという話ではないが、難しい問題。これを現場の人間が討論している瞬間。「おいしくなる側、傷つく側」の日村の意見。
 ここから「おいしくする側、傷つける側」である、放送作家オークラの意見。

オークラ:まあまあまあ、この話の論点が、思ったよりも、この二人が待たされたっていう事実を広げようとした僕がいたわけじゃないですか。と、それをお笑いにするっていうことが、っていうデカイ問題になったじゃないですか。人がプライベートでやったミスと、そのミスをお笑いにするっていう
設楽:まあセオリーだね
オークラ:そう、セオリーを、問われているわけじゃないですか
設楽:そうだね、ようはこの、作家対芸人の、
オークラ:ですよね
設楽:普段こんな話をしないいわゆる、度外視して、本気でビンタは嫌だと、俺のことを考えろと、お前も食らえと、ぶっちゃけそういうことですよ。
オークラ:自分ばっかり痛いのはやだと
〜略〜
オークラ:ただ、これは僕は、仕事として、いままでバナナマンと十何年やってきました。その時期に、そのときに、常に僕が考えていたのは、日村さんがおいしくなればいいって気持ちだったわけですよ。
設楽:そうだね
オークラ:そしてそんなことが起きたわけですよ、そしたら、それをラジオのテーマに持ってくるというのは、作家として当然のことであり、それを、俺は殴られたくないと日村さんは言いましたが、それはどうなんでしょうか
設楽:どう考えても、全体的に悪いのは日村さんなの。それはわかんだけど確かに日村さんの、俺も一緒にやってるからね。これ理不尽なこの、罰ゲームビンタって言うのはね、確かにね、一回そういうのは無しにして、その気持ちだけでも味わってみろって言うのでオークラを殴りたいって気持ちも俺の中で芽生え始めてるわけ
日村:絶対そうだって

 一回味わってみろって言うけど、意外とプライベートでは殴られているというオークラ。そのビンタとは違うという日村と設楽。この辺でいったんCMへ。
 ここで、二人が最終弁論をして、スタッフの投票。その後両方が目をつぶり、票を獲得した方がビンタされるというシステム。
 お互いの最終弁論を書き起こします。

オークラ:まず、聞いたその、日村さんが後輩たちを三時間待たせたって事実を聞いたときに、ああ、これは、熱がある話がまたできるなって思ったわけです。で、事実なったわけです。こうやって。これが、悲しいかな僕の仕事でもあり、もちろん、このラジオでやるべき僕の仕事はこういうことなんじゃないかなと思ったから僕はそれをテーマに持ってきわけです
設楽:確かにね、それは作家としての仕事を全うしたと
オークラ:俺はそうだと思います。ここを責められるのは、今後日村さんはそういうことやっても、僕は一生黙ってないといけないのかってことになってきます。だから、おれは、ほんとう、裏事情かもしれませんが、僕は、そういうことが今後起きても。迷わずやりたいので、
設楽:なるほどね、自分の信念を貫きたいと。
オークラ:はい

 それが自分の仕事だと。信念を貫くと。確かに的を得ている。
 次に日村。

日村:僕は、確かに、正義と悪があって、悪を、叩きのめすって言うのは、当たり前だと思います。だから僕がビンタされればいいんじゃないかって言う風に表向きにそういう風に見えるかもしれませんけど、わかってください。ぼくは! ビンタをされるために! バナナマンをやってるわけではない。このラジオをやってるわけではない。いいですか。僕がされることがセオリーだとか、それがお笑いだとか言いますけど、ぼくだって、ビンタを、人にさせる権利はじゃああるんだ! いいですか。僕がビンタをされることがセオリーなんて、それは、一つのお笑いを! いいですか、僕はこう思う、笑いって言うのは常に進化なんですよ。俺がビンタされることがセオリーなんて言ってるうちはねぇ、新しい笑いなんて出来ませんよ! 何でもっと挑戦しないんですか! そういう風に思いますね。

 バラエティは常に進化。セオリーなんていってるうちは新しい笑いなんてできない。これもまた的を得ている。
 ここでオークラが一つ言いたいと

オークラ:すいません、一つだけ言わせてもらいたいんですけど、日村さんをビンタすることがセオリーなんて一つも言ってないです
日村:そうじゃなくて! 日村がビンタされれば、終わりみたいな決着の仕方に、じゃあ俺は感じてました。今までいろんなことが。俺がされれば終わりなんだろっていう、なんかありましたけども、俺はそれを打破したい! 今回。分かってください。

 ここまででスタッフの投票となる。全部で七人。どちらがビンタになるか決まる。


 結果としては、日村が全票獲得してビンタとなった。


 最後に設楽に言いたいことがあるかと聞かれて答える日村。

日村:確かにお笑いのセオリーって、大事かもしれないけど、…あのー、…すごく良い放送だったと思うんだよ今回。リスナーにとっても。良い放送だったと思うよ。そういう風に思ってる俺が実はいるってことを分かってもらいたかった。俺が今回ビンタをもらったからこれは終わりだけど、分かってくださいよ。こういう風に、解決できてない日村もいるんだってことを。わかってください。

 これだけ話し合ってもやはりバラエティといじめに関しては答えは出ない。それほど難しい問題だ。
 芸人をいじる、これはやはり無くすことなんて出来ない。それが芸人の宿命だ。ただ、心の中では解決できていない芸人もいる、そのことは分かってあげるべきなのだろう。非常に、考えさせられた。

追記

 ブコメ情報より。まだ公開されているPodcastへのリンク。2009年03月16日です。どんな空気だったかを知るために、聞いてください。50分もあり、こちらもおもしろい内容です。
 バナナマンのラジオの件について、自分なりに考察する。こちらも。